まず、速さと重力の二つを分ける
What?時計を比べるとき、まず押さえたいのは次の二つです。
- 相対的な速さの違い。 重力を考えない場合の運動と時間の関係を、特殊相対性理論が説明します。
- 重力の中での位置の違い。 地上と高い場所など、異なる場所の時計の進み方を、一般相対性理論が説明します。
「速く動くと時間が遅れる」と「高い場所では時間が速く進む」は、条件を分ければ、どちらも相対性理論の話です。
光の速さが同じでも、時計の進み方は同じではない
Why?まず特殊相対性理論です。重力の影響を無視し、互いに一定の速さで一直線に動く観測者を考えます。このような基準を「慣性系」といい、どの慣性系で測っても、真空中の光速は同じです。
上下の鏡の間を光が往復する「光時計」を想像すると、その時計と一緒に動く人には光が上下に進みます。時計が横に動く様子を測る人には、光の道のりが斜めになって長くなります。
光速は同じなので、長い道のりには長い時間が必要です。一つの慣性系を基準に比べると、相対的に動く時計は、その基準に静止した時計より遅く進みます。 絶対的に動く側が決まるわけではなく、等速直線運動をする二人は、それぞれ相手の時計が遅いと測ります。光時計の解説
ただし、本人の時計も体の働きも、本人にとっては普通に進みます。 本人が経験する時間を「固有時間」と呼びます。「自分の時間が止まる」という意味ではありません。また、人や時計など質量のある物体は、光速まで加速できません。光速と物体の運動
次は一般相対性理論です。地球の近くで、高さだけを変えて静止させた時計を比べると、高いほうがわずかに速く進みます。 これは重力の中での位置、正確には「重力ポテンシャル」の違いによる効果です。光時計の斜めの道のりだけで説明するものではありません。重力と時計の比較
実験でも確かめられた、時計の違い
What we knowNISTは2010年、原子時計の一方を33cm高くし、高いほうがわずかに速く進むことを測りました。別の実験では、時計に使うイオンの運動を変え、動きによる時間の遅れも確認しています。NISTの実験報告
GPSでも、衛星の運動と重力による時計のずれを補正しています。身近な高さや速度での差は体感できるほど大きくありませんが、精密な時計には無視できません。GPSと相対性理論
結論として、地球周辺の時計比較では、速さと重力が主要な二つの効果です。ただし、宇宙のあらゆる状況を、この二つの独立した原因だけで説明し切れるという意味ではありません。
加速は速さや進む向きを変え、時計がたどる経路に関わります。「加速すると必ず余分に時間が遅れる」という第三の原因として単純に足すものではありません。より一般には、経過する時間は、時空の性質と時計がたどった経路によって決まります。往復する時計の考え方
この記事は研究機関の公開解説・実験報告に基づく入門で、独自実測や全原著論文の検証ではありません。
時間の話から、宇宙全体を見渡したい
More info光・星・宇宙の歴史を見渡す既存の入門記事です。相対性理論以外にはどんな問いがあるかを知りたい方へ。

