相対性理論は、「すべてが相対的」という話ではありません。 観測者の運動や重力の違いで、時間や距離の測られ方は変わります。それでも、真空中で測る光の速さと、物理法則の形には、誰にとっても共通するルールがあります。
もし光に近い速さで宇宙を往復できたなら、地球に残った人より、旅行した人の方が若いまま戻ります。これはSFの設定ではありません。実験で確かめられ、GPSにも使われている物理の話です。
光速度
真空中の光の速さは、どの慣性系の観測者が測っても同じになる。
時間
運動の違いによって、二つの時計が再会したときの経過時間は一致しないことがある。
重力
重力が強い場所ほど時計は遅く進む。高い場所の時計は、ごくわずかに速い。
まず、特殊相対性理論は何を扱うのか
特殊相対性理論は、重力をいったん脇に置き、一定の速度で動く観測者どうしを扱う理論です。1905年にアインシュタインが発表しました。
出発点は二つです。ひとつは、一定速度で動く観測者にとって物理法則は同じ形で成り立つこと。もうひとつは、真空中の光の速さが、観測者の運動にかかわらず同じになることです。
日常の感覚では、走る車から投げたボールは、地面に立つ人には速く見えます。光も同じように見えそうです。ところが光には、その足し算が通用しません。
光の速さが変わらない。その代わり、時間と空間の測られ方が変わる。 これが特殊相対性理論の核心です。
なぜ光の速さが重要なのか
光を鏡の間で往復させる「光時計」を想像すると、時間の遅れを直感的に追えます。時計と一緒に動く人には、光はまっすぐ上下に進みます。外から見る人には、時計が横へ動くぶん、光は斜めにより長い道のりを進みます。
それでも光の速さは同じです。長い道のりを同じ速さで進むなら、外から見た一往復にはより長い時間がかかります。これが時間の遅れです。
これは比喩ではなく、光速一定から導かれる計算結果です。ただし、動いている本人が「自分の時計だけ遅い」と感じるわけではありません。本人の時計も心拍も、本人のそばではいつも通りです。違いがはっきりするのは、異なる経路を進んだ時計を後で比べるときです。
双子が再会すると、年齢が違う理由
有名な双子のパラドックスでは、一人が地球に残り、もう一人が光に近い速さの宇宙船で往復します。再会すると、宇宙船にいた双子の方が若い。
一見すると、どちらが動いていたかは相対的なのだから、二人とも相手の時計が遅いと言えそうです。けれど往復する側は、途中で加速し、方向を変え、地球へ戻ります。二人は同じ状態を保ったままではありません。
大事なのは、再会までに二人がたどった時空上の経路が違うことです。相対性理論では、その経路に沿った経過時間が異なり得ます。高速の粒子の寿命が伸びる現象は、加速器の実験でも確かめられています。
長さも、「同時」も絶対ではない
高速で動く物体は、進行方向の長さが短く測られます。これを長さの収縮といいます。日常の速度では小さすぎて見えません。
もっと意外なのは、同時です。離れた場所で起きた二つの出来事が「同時だったか」は、観測者の運動状態で変わり得ます。
列車の中央にいる人と、ホームに立つ人が、離れた二つの光を受け取る順番は同じとは限りません。誰かが間違っているのではありません。離れた出来事を同時だと決めるには、時計をどう同期するかが必要だからです。
つまり宇宙全体に共有された、絶対的な「今」はありません。少なくとも、特殊相対性理論はそうした一つの時計を必要としません。
では、重力とは何なのか
一般相対性理論は、1915年に発表された重力の理論です。特殊相対性理論を、加速と重力まで広げます。
ニュートンの見方では、重力は物体どうしを引っ張る力です。一般相対性理論では、質量やエネルギーが時空の形を変え、その形に沿って物体や光が進むと説明します。
ゴム膜に重い球を置く図は、この発想を伝えるためによく使われます。ただし、これは二次元にした簡略図です。実際には空間だけでなく、時間を含む四次元の時空を扱います。ゴム膜そのものが重力の正体ではありません。
重力が強い場所では、時間の進み方も変わる。 地面に近い時計と、より高い場所の時計では、進み方がごくわずかに違います。
相対性理論は、GPSで毎日使われている
GPS衛星の時計には、二つの相対論効果が重なります。衛星は高速で動くため、特殊相対性理論だけを考えると、地上の時計より遅れます。一方で、衛星のいる場所は地上より重力が弱いため、一般相対性理論だけを考えると、地上より速く進みます。
NISTの説明では、二つを合わせると衛星の原子時計は地上の時計より一日あたり約38マイクロ秒速く進む方向になります。そのままにすれば、高精度の測位に誤差が積み上がります。GPSはこの違いを補正して動いています。
相対性理論がなければGPSが一切動かない、という言い方は正確ではありません。ただ、現在の精度で位置と時刻を扱うには、相対論補正が必要です。
E = mc² は、相対性理論の全部ではない
E = mc² は、質量とエネルギーが深く結びつくことを表す式です。静止している物体にも、その質量に対応するエネルギーがあります。
この式は、少量の質量差が大きなエネルギーに対応することを示します。しかし、相対性理論の主題はこの式だけではありません。時間、空間、光、運動、重力をどう一つのルールで見るかが、理論の大きな部分です。
実験で確かめられている
相対性理論は、きれいな思考実験だけで支持されているわけではありません。原子時計、加速器の粒子、GPS、重力波の観測は、異なる方法から理論を確かめています。
NISTは、わずか33センチメートルの高さの差でも、原子時計の進み方の違いを測定しました。LIGOは2015年、二つのブラックホールの合体から来た重力波を観測し、一般相対性理論の重要な予測を直接確かめました。
複数の独立した実験と観測を通り抜けてきたことが、相対性理論の強さです。
よくある誤解
「すべては相対的」という理論?
違います。観測者によって変わる量があります。一方で、光速や物理法則の形のように、共通して保たれるものもあります。
本人から見ると、時間は止まる?
違います。誰にとっても、自分のそばの時計は普通に進みます。差は、異なる運動や重力のもとにいた時計を比べたときに現れます。
光より速ければ、過去へ行ける?
光より速い情報や物体をどう扱えるかは、現在の理論では単純に決着していません。少なくとも、相対性理論は「光より速く進めば過去へ行ける」とは教えていません。
WHAT WE STILL DON'T KNOW
一般相対性理論は重力と宇宙の大きな構造を非常によく説明します。量子力学は、原子より小さな世界を非常によく説明します。
ただし、この二つを完全に一つへまとめる理論はまだありません。ブラックホールの内部や、宇宙の最初の極端な状態では、量子重力の理解が必要になると考えられています。
相対性理論が強力であることと、物理学が完成していないことは矛盾しません。
HereNatureの結論
私たちは、みんな同じ時間の中を進んでいるように感じます。
でも宇宙では、時間は運動と重力で進み方を変える。距離も同時も、絶対の物差しではありません。
それでも、光の速さと物理法則には共通のルールがある。相対性理論は、「今」という感覚の外側にも、宇宙が一つの秩序を持つことを見せてくれます。


